【構造で理解する】国産シルクと中国産シルクの違いとは?
国産シルクと中国産シルク、何が違うのか?」
結論から言うと、
生物学的な品種の違いではなく、“生産構造”と“流通構造”の違いです。
そしてこのテーマは、単純な優劣では語れません。

シルクの基本は“桑園”
シルクの品質は、繭の段階でほぼ決まります。
蚕は桑の葉しか食べません。
つまり、桑園の土壌、水、空気環境が繭に影響します。
・桑に含まれる水分量
・栄養状態
・農薬管理
・飼育環境の衛生状態
これらが繭の均一性やフィラメントの安定性に関わります。
ただし重要なのは、
「中国=環境が悪い」という単純な話ではないこと。
中国にも高品質な管理養蚕はあります。
違いは“地域差と規模”。
生産規模の違い
中国は世界最大のシルク生産国。
世界シェアの大部分を占めます。
日本はごく少量。
規模が違えば、当然コスト構造も違います。
中国:大量生産
日本:小規模生産
価格差の根本はここです。

国産シルク vs 中国産シルク|構造比較
| 比較項目 | 国産シルク | 中国産シルク |
|---|---|---|
| 生産規模 | 小規模・少量生産 | 世界最大規模・大量生産 |
| 供給量 | 非常に少ない | 安定供給が可能 |
| 価格 | 高価格帯 | 比較的安定価格 |
| 均一性 | ロット差が出やすい | グレード管理(6A・5Aなど)で均一性が高い |
| 節(ネップ) | 出やすい場合がある | 少ない傾向 |
| トレーサビリティ | 生産者が明確 | 地域・工場により差がある |
| ブランド性 | 物語・産地価値が高い | 世界標準の品質基準 |
| 主な用途 | 小ロット製品・高付加価値商品 | 和装・大量生産・高級織物含む幅広い用途 |
日本は天然繊維の98%を輸入している
現実として、日本の天然繊維の約98%は輸入に依存しています。
シルクも例外ではありません。
国内で流通する多くのシルク製品は、中国産糸を使用しています。
これは品質の問題というより、供給量の問題です。
絹紡糸の現実
絹紡糸(短繊維糸)は、切繭や副産物を原料にします。
※けんぼうしと読みますが、ニット用に使われる紡績糸のことを指します。
つまり、大量の原料がなければ成立しない。
国内生産量が少ない日本では、安定供給が難しい。
そのため、原料は海外依存にならざるを得ないのが現状です。

フィラメント糸の現場の声
フィラメント糸は、繭から直接引き出す長繊維。
理論上は非常に美しい糸が取れます。
しかし、日本の機屋(織物工場)からはこういう声もあります。
「国産糸は節が多い」
節が多いと、薄く均一な生地を織る際にB反(不良反)が出る可能性が高まります。
そのため、
・均一性
・グレード表記(6A・5A)
・安定供給
が明確な中国産糸を選ぶケースが多い。
これは経済合理性の判断です。
「6A・5A」とは何か?
中国産シルクには「6A」「5A」といったグレード表記があります。
これは、
-
繊維の均一性
-
繭の品質
-
不純物の少なさ
-
引き揃え精度
などを基準にした品質等級です。
均一な薄物生地を織る場合、
こうしたグレード管理が重要になります。
日本の機屋が中国糸を使う理由のひとつは、
この“安定性”です。
国産シルクの価値はどこにあるのか
では国産に意味はないのか?
そうではありません。
国産シルクの強みは、
・生産履歴の明確さ
・トレーサビリティ
・小ロット管理
・顔の見える養蚕
という“構造的価値”。
均一性ではなく、透明性と背景。

さらに深刻な問題
このままいけば、日本の養蚕農家は10年後にほぼ消滅する可能性があります。
養蚕が止まれば、
桑園
→ 製糸場
→ 撚糸
→ 織物
すべてが連鎖的に止まります。
一度インフラが消えれば、復活は極めて困難です。
桑畑はすぐには育たない。
技術は継承されなければ失われる。
産業は静かに消えます。
優劣ではなく「目的」
大量生産・均一性重視 → 中国産が合理的
産地明確性・物語・一元化モデル → 国産に価値が出る
どちらもシルク。
違うのは構造。
まとめ
国産と中国産の違いは、
・生産規模
・供給量
・均一性
・管理体制
・価格構造
の違い。
素材そのものが別物という話ではありません。
重要なのは、
何を重視して選ぶか。
価格か。
均一性か。
透明性か。
未来か。
私たちが国産シルクを扱う理由
SHELOOKでは国産シルクを使用しています。
それは品質だけの話ではありません。
原料から構造を守るため。
選択がなければ産業は消えます。
シルクを選ぶという行為は、
糸だけでなく背景を選ぶことでもあります。
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