人工香料と天然香料の違い|香水の魅力を支える“2つの香りの哲学”

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私たちが「いい香り」と感じる瞬間には、植物や花などの天然香料だけでなく、科学の力で生まれた人工香料(合成香料)も静かに働いています。香りの世界では、自然と科学の両方がそれぞれの役割を果たしているのです。

 

よく嗅ぐ香りの多くは、実は自然の中からそのまま取り出せるものではありません。食品や飲料、柔軟剤やトイレタリー製品など、私たちの日常にあふれる“いちご”や“石けん”の香りのほとんどは、本物の果実や花から抽出できない、人工香料によって再現された香りなのです。

いちごの香りは“いちごから”ではなく、化学的に設計された「いちごらしさ」の分子から生まれている——そう聞くと少し意外に感じるかもしれませんが、そのおかげで私たちは一年中、どこでも心地よい香りに包まれているのです。

 

 

天然香料とは?

天然香料は、花・果実・樹木・樹脂などから抽出された香り成分。自然の持つ豊かな香りの揺らぎや、時間とともに変化する奥行きが魅力です。

 

 

例えば、ベルガモットやサンダルウッド、クロモジなどは、

その年の気候や土壌によって微妙に香りが異なります。つまり、”自然そのものを閉じ込めた“生きた香り”なのです。

 

 

一方で、香料としての安定性の低さや、肌刺激、酸化による変質など、課題もあります。天然であっても体質によってアレルギー反応を起こす人もいる――それが「天然=必ずしも体に良いとは限らない」理由です。

 

 

 

 

人工香料とは?

人工香料(合成香料)は、天然香料の分子構造を再現したり、まったく新しい香り分子を化学的に設計して作られた香料です。自然界では存在しない“清潔感のあるムスク”や“透明感のあるオゾンの香り”など、人の感性を刺激する香りを安定的に表現できるのが最大の強み。

 

また、香料の純度や分子構造をコントロールできるため、安全性の確認も容易で、肌への刺激が少ないよう設計されているものも多いのです。

 

「人工」と聞くと抵抗を感じる人もいますが、それは“人工=不自然”というイメージにすぎません。実際の香水の世界では、人工香料が香りの持続性や安定性を支えています。

 

 

どちらが良い? ではなく、どう組み合わせるか。

香水づくりの現場では、天然と人工を対立させることはありません。たとえば天然のローズは、採取量が少なく香りが不安定。そこで、人工香料でローズ分子の一部を補強し、理想的な香りを再現するこうして「自然の美しさ × 科学の精度」が調和した香りが生まれるのです。

つまり、

天然香料は“自然の物語”を、人工香料は“香りの記憶”を、私たちに届けてくれる存在。

 

 

 

香りの安全性と、感じ方の多様性

香料における“安全性”とは、天然か人工かではなく、どのように精製され、どの濃度で使用されているかにあります。

 

たとえば同じラベンダーでも、抽出法や純度で肌への刺激は大きく変わります。逆に人工香料でも、国際香粧品香料協会(IFRA)の安全基準を満たしていれば、むしろ天然よりも安定して安全な場合もあるのです「体に優しい香り」とは、素材の選び方と使い方のバランスで決まるというのが本当のところ。

 

 

BLACKLETTERSの香りづくり

BLACKLETTERSでは、秩父の森から生まれるクロモジの和精油(天然香料)をベースに、

香りの持続性や安定性を高めるために一部の人工香料を組み合わせています

人工香料を否定せず、

「自然に寄り添いながら、現代の暮らしに調和する香り」をデザインする――それが、私たちが目指すサステナブルな香りづくりです。

 

自然の香りが持つ“生命の息吹”と、人工香料がもたらす“記憶の美しさ”。

そのどちらも尊重することが、これからの香り文化を豊かにしていくと私たちは考えています。

 

まとめ

人工香料と天然香料、どちらも香りを支える大切な要素。天然だけが良い、人工は悪い――そんな単純な線引きではなく、

人と自然の調和を感じられる香りこそが、心を満たす本質です。

 

→ BLACKLETTERSの香りを体験する

 

 

 

 

この記事を書いた人

堀口 智彦

埼玉県秩父市出身。大学在学中独学で洋服デザインを学ぶ。2007年に渡英しLCF卒業後帰国し自身のメンズブランドを設立。2015年にブランドを休止し、企業にてチーフデザイナーとして3年間従事。その後シルクと黒文字に出会い、現在は株式会社ISILKの代表取締役。

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