自動繰糸機を使った糸引き体験とシルクの可能性
シルクの一元化プロジェクトを進める中で、糸引き体験を通じて日本のシルク産業の現状や課題が浮き彫りになりました。
本記事では、大日本蚕糸会研究所での自動繰糸機を使った体験をもとに、シルク製造の工程やクオリティ向上の鍵を解説します。シルク製品の魅力を再発見し、日本産シルクの可能性を探りましょう。
自動繰糸機とは?その仕組みと役割
自動繰糸機は、繭から生糸を作るために不可欠な機械です。糸を均一に取り出し、高品質のシルクを製造するために、多段階で工程が行われます。
しかし、完全な自動化には限界があり、人の手によるサポートが品質を保つ上で重要です。
糸のクオリティを左右する重要な工程
節の除去と結び直し
糸の中に生じる節(不均一な部分)は、製品の品質に大きな影響を与えます。
自動繰糸機は節を感知して停止しますが、その後の修正作業は人の手で行います。この工程は手間がかかるものの、繊細なシルク糸には欠かせません。
繭の供給確認と糸の太さの安定性
生糸は1つの繭から約3デニールの糸が取れますが、製品にするには21中や27中といった太さが必要です。これは7~9個の繭を同時に引き出すことを意味します。
供給が安定しないと、糸の太さにムラが生じます。ここでも人の確認作業が品質維持の鍵となります。
シルク糸の品質基準とは?
1. 繊維の長さ
- 繭から取れるフィラメント(絹糸)の長さが極めて長いこと。
- 通常、フィラメントの長さが600メートル以上である必要があります。
2. 繊維の太さ
- 繊維の太さ(デニール)が均一であること。
- 極端に細すぎたり太すぎたりしない、一定の太さが求められます。
3. 色の純度
- 自然な白さや明るさが基準となります。
- 繭の漂白工程が均一で、黄ばみや斑点がないこと。
4. 光沢
- シルク特有の美しい光沢があること。
- 繊維が滑らかで高い反射性を持つことが求められます。
5. 不純物の少なさ
- 糸に含まれる異物(塵や繭の殻など)が極めて少ないこと。
- ほぼ完全な純度が必要。
6. 糸の均一性
- 糸全体にわたって、太さや撚りが均一であること。
- 織物や編物にした際、仕上がりにムラが出ない品質。
7. 引っ張り強度
- 糸の強度が高く、切れにくいこと。
- 長繊維で構成されているため、耐久性が高い。
8. 繭の選別基準
- 使用する繭自体が特別に選別されたものであること。
- 6Aランクでは、高品質の繭のみを使用するため、選別工程が非常に厳格です。
これらの基準を満たす6Aランクのシルク糸は、特に高級な織物や製品に使用されます。具体的な評価方法や基準は、地域や組織によって微妙に異なる場合がありますが、全体的にこれらの要素が考慮されています。
シルク製造工程の詳細解説
繭から糸口を探す技術
「索緒(さくちょ)」という機械は、繭から糸口を探す役割を担います。この工程には、箒状の道具が使われ、古来から稲穂がその材料として用いられてきました。
現代では代用品が主流ですが、伝統的な知恵が随所に生きています。
柔軟剤処理と減圧の工程
糸を巻き上げた後は、小枠浸透装置で柔軟剤を浸透させます。3回の減圧処理により、糸の表面に付着するセリシンが他の糸とくっつかないようになります。この工程がシルク特有のしなやかな質感を生み出します。
糸の綛(カセ)巻きと品質管理
最終段階では「あげ返し」という機械で糸を乾燥させながら綛に巻き付けます。この際、スラブキャッチャーという機械で節を検出し、自動的に取り除きます。これにより、高品質なシルクが仕上がります。
シルク産業の課題と未来への展望
現代の日本では、シルク製品が街中で見られることは少なくなりました。その理由は、洗濯の難しさやコストの高さといった欠点にあります。
一方で、シルクは地球上で唯一無二の天然繊維であり、その希少性や高級感には大きな価値があります。新技術を取り入れつつ、持続可能な産業として再興を目指すことが必要です。
シルク製品の魅力と持続可能性
シルクは、吸湿性や保湿性、独特の光沢など、他の繊維にはない特徴を持っています。また、天然繊維であるため、環境に優しく、持続可能な素材としての可能性を秘めています。これらの特徴を広め、次世代に伝えていくことが、シルク産業を守る第一歩となるでしょう。
まとめ
自動繰糸機を用いた体験を通じて、シルク産業が直面する課題とその魅力を改めて実感しました。日本産シルクの復権には、技術革新と品質向上が不可欠です。
唯一無二の天然素材であるシルクを未来へつなぐため、より多くの人々にその価値を伝えていきましょう。
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