株式会社ISILK

国産シルクの一元化とは何か|養蚕から製品まで秩父で完結させるISILKの挑戦

「国産シルク」と書かれた製品でも、原料の蚕糸は中国産というケースがほとんどです。

 

日本国内で養蚕→製糸→撚糸→製品化まで一貫して行う体制は、現在ほぼ存在しません。ISILKはこの「一元化」を秩父で再構築しようとしています。

 

なぜ一元化なのか。なぜ秩父なのか。その答えは、この土地が歩んできた150年の歴史の中にあります。

 

 

日本のシルク産業が崩壊した構造的な理由

明治から昭和初期、シルク(絹)は日本最大の輸出品でした。外貨獲得の柱として国家が養蚕を奨励し、全国の農村で蚕が育てられ、糸が紡がれ、織物になっていました。

その崩壊は3段階で起きました。

 

第一段階:化学繊維の台頭(1950〜60年代) ナイロン・ポリエステルの普及で、安価な代替繊維がシルクの需要を奪いました。生産コストの高い国産シルクは競争力を失い始めます。

 

第二段階:着物需要の激減(1970〜80年代) 洋装化の進行で着物市場が縮小。シルクの主用途だった着物・帯の需要が急落し、養蚕農家が激減しました。

 

第三段階:輸入自由化による価格崩壊(1990年代〜) 中国産の安価なシルクが大量に流入。コストで太刀打ちできない国内養蚕業は壊滅的な打撃を受けました。

 

時期 国内養蚕農家数 国内繭生産量
1960年代ピーク 約220万戸 約12万トン
1990年代 約10万戸 約1万トン
現在 約1,000戸以下 極めて少量

現在、日本の絹製品に使われる生糸の約98%は輸入品です。

 
 

秩父と養蚕——住民の9割が蚕を育てていた町

秩父は農地に乏しい山間部です。だからこそ、桑の木が育つ斜面を活かした養蚕業が発展しました。

 

秩父神社の伝承では、祖神である知知夫彦命(ちちぶひこのみこと)がこの地に養蚕を伝えたとされています。歴史的な裏付けの有無にかかわらず、秩父と養蚕の結びつきがそれほど古く深いことを示しています。

 

明治から昭和初期にかけて、秩父では住民の9割以上が養蚕に携わっていたといわれています。家の一部を「まぶし(蚕室)」に改造し、家族総出で蚕を育てる風景が日常でした。

 

その繭から生まれたのが秩父銘仙(ちちぶめいせん)です。

 
 

秩父銘仙——絹の街が持っていたもの

秩父銘仙は、染め分けた糸で文様を織り出す「絣(かすり)」の技法を用いた絹織物です。大正から昭和にかけて全国的に人気を博し、最盛期には秩父に数百軒の機屋(はたや)が軒を並べました。

 

時期 秩父銘仙の状況
大正〜昭和初期 全国的に流行。秩父は「絹の街」として隆盛
昭和中期 洋装化・化学繊維の普及で需要激減
現在 本格的に織れる工房は3軒ほど

 

毎年12月に行われる秩父夜祭(ユネスコ無形文化遺産)の豪華な山車の刺繍・衣装は、この絹文化の延長線上にあります。祭りの起源のひとつが「繭の収穫への感謝」であることを、今を生きる秩父市民の多くは知りません。

 

 

 

「一元化」でなければ解決できない問題

現在の国産シルク製品の多くは、以下のような分断した調達構造を持っています。

 
中国産生糸 → 国内で加工・縫製 → 「国産シルク製品」として販売

この構造では3つの問題が生じます。

 

① トレーサビリティがない 原料の蚕がどこでどう育てられたか、農薬・飼料の使用履歴を確認できません。肌に直接触れる寝具・スキンケアに使う素材として、これは重大な問題です。

 

② 品質管理が分断される 養蚕→製糸→撚糸→製品化の各工程が別の業者に分かれると、一工程の品質が全体に影響しても把握・改善できません。

 

③ 地域経済に還元されない 素材調達が海外に依存する限り、製品の売上は産地の農家・職人に届きません。秩父の養蚕農家を支えることができない。

 

ISILKが目指す一元化は、この3つの問題をすべて解決します。

 
 
秩父の養蚕農家(蚕・桑) → 製糸 → 撚糸 → 製品化 → 販売
すべて国内・秩父周辺で完結

 

 
 

一元化が生む製品の価値

一元化された国産シルクだからこそ実現できることがあります。

完全なトレーサビリティ:どの農家の蚕から生まれた繭か、いつ製糸されたか、全工程の履歴を追跡できます。

素材の透明性:農薬・飼料・漂白剤の使用履歴が明確です。敏感肌・アレルギー体質の方、赤ちゃんや子どもに使う製品として安心できる根拠があります。

 

産地への経済的還元:製品の売上が秩父の養蚕農家に直接届きます。買うことが産地を支えることになる循環です。

 

SHELOOKとBLACKLETTERS——一元化の先にある製品

ISILKの一元化への取り組みは、2つのブランドに結実しています。

SHELOOK(シェルック)——シルクを纏うライフスタイル

国産シルクを使ったスキンケア・ナイトウェア・寝具関連製品を展開するブランドです。シルクの吸湿・放湿・低摩擦という特性を活かし、睡眠の質・肌環境・日常の心地よさを素材から整えます。

 

「なぜシルクか」の答えが産地・工程・素材の透明性として語れる——これがSHELOOKの差別化の根拠です。

👉 SHELOOKの製品を見る

 

BLACKLETTERS——秩父の植物を纏う香水

シルクと並ぶISILKのもうひとつの柱が、秩父産クロモジを核素材にしたフレグランスブランドBLACKLETTERSです。

 

シルクが「肌に触れる素材」として産地の透明性にこだわるように、BLACKLETTERSは「空間と肌に纏う香り」として原料の産地・成分・採取方法を完全開示しています。素材への哲学は同じです。

 

秩父の養蚕が育んできた「ものを丁寧に作る文化」の延長線上に、クロモジの香水があります。

👉 BLACKLETTERSの香水を見る

 
 

シルク一元化が地域創生につながる理由

養蚕農家が2軒、銘仙を織れる工房が3軒——このまま何もしなければ、秩父のシルク産業は5年以内で完全に消滅します。

ISILKが一元化にこだわるのは、ビジネスとしての差別化だけではありません。養蚕農家が収入を得られる仕組みを作ることで、後継者が生まれる。後継者が生まれることで、技術と文化が次の世代に渡る。

 

製品を買うことが、産地の農家を支え、里山を守り、日本の絹文化を継続させることにつながる——これがISILKの目指す循環です。

 

まとめ

問い 答え
なぜ国産シルクか トレーサビリティ・素材の透明性・産地への還元
なぜ一元化か 分断した調達構造では品質管理も地域貢献も不可能
なぜ秩父か 150年の養蚕の歴史と、残り7軒の農家を守るため
一元化の先に何があるか SHELOOK(素材)・BLACKLETTERS(香り)という2つのブランド

国産シルクの一元化は、まだ途上です。しかし、秩父という土地の記憶を製品に宿しながら、一歩ずつ進めています。

 
 
 

 

 

秩父に来たら、ぜひ立ち寄ってください。

秩父祭の歴史を伝える「秩父祭り会館」にて
BLACKLETTERSの香水を販売しています。

秩父の森から生まれた香り、
ぜひ現地で体験してみてください。

秩父祭り会館

〒368-0041 埼玉県秩父市番場町2-8

0494-23-1110

10時00分~17時00分 休館日:毎週火曜日

ACCESS 

  • 電車をご利用の場合

    西武鉄道ご利用の場合 池袋より西武秩父線利用 西武秩父駅下車 徒歩15分
    秩父鉄道ご利用の場合 熊谷駅から秩父鉄道 秩父駅下車 徒歩3分

    お車をご利用の場合

    関越自動車道ご利用の場合 関越自動車道 花園I.C.下車 国道140号で秩父方面へ
    日高・飯能方面よりお越しの場合 国道16号経由、国道299号で秩父方面へ
    甲府・山梨方面よりお越しの場合 中央自動車道 勝沼I.C.より国道20号~国道411号~国道140号経由で秩父方面へ

この記事を書いた人

堀口 智彦

埼玉県秩父市出身。大学在学中独学で洋服デザインを学ぶ。2007年に渡英しLCF卒業後帰国し自身のメンズブランドを設立。2015年にブランドを休止し、企業にてチーフデザイナーとして3年間従事。その後シルクと黒文字に出会い、現在は株式会社ISILKの代表取締役。

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