桑の挿し木で増やす方法|新梢挿し木の時期とやり方を解説

養蚕農家が減る、その先で起きていること
養蚕農家数は2005年の1,591戸から、2024年には134戸まで減少しました。 繭生産量も626トンから38トンへ。どちらも、わずか20年で指数6(94%減)です。
戦後最大だった1968年の繭生産量は121,014トンでした。 今の数字は、その1,000分の1にも届きません。
「養蚕農家が減っている」というニュースは、もう驚くようなことではなくなりました。 でも、その裏側にある本当の問題は、案外語られていません。
養蚕には、蚕の餌になる桑が必要です。 桑を育てるには、桑園が必要です。かつて秩父のどこにでもあったはずの桑畑は、今ではほとんど見かけなくなりました。
新規で養蚕を始めたい人がぶつかる壁
仮に今、新しく養蚕を始めたいという人がいたとします。
まず、畑と建物がセットで手に入ること自体が稀です。 さらに、養蚕に使う道具も、すでに手に入りにくくなっています。
ここまで関わる人が減れば、当然そうなります。
そして今回、私たちが向き合ったのは「桑園」というもう一つの壁でした。
桑畑には寿命がある
かつて養蚕をしていた場所には、必ず桑畑がありました。 桑の木の寿命は、おおよそ25年サイクルといわれています。
それより長く使っても問題はありませんが、本来は植え替えが必要なものです。
ところが、桑畑が当たり前にあった時代には、新たに植える機会自体がありませんでした。 だから、挿し木で増やす、苗を買う、という行為そのものが、長い間「不要なもの」になっていたのです。
その結果として今、何が起きているか。
- 昔は1本80円だった苗が、今は400円
- 苗を専門に作っている生産者は、群馬県に1軒のみ
- 桑茶ブームにより、苗の需要はむしろ増えている
需要はあるのに、供給する仕組みがほとんど残っていない。 これが、シルク産業の縮小が生んだ、もう一つの「見えない衰退」です。
桑、全国には6つの代表品種
埼玉県で主に使われている桑は、次の3種類です。
| 品種 | 特徴 |
|---|---|
| 一ノ瀬 | 葉が柔らかい |
| はやてさかり | 雨風に強く、葉が大きい |
| 改良鼠返し | 雨風に強い |
これに加えて、他の地域では次のような品種も使われています。
| 品種 | 特徴 |
|---|---|
| 大島桑 | 晩秋蚕期の硬化が早い |
| しんいちのせ | 枝条数が若干少ない |
| みなみさかり | 発芽能力が高い |
それぞれに個性があり、土地や用途によって選び方が変わります。
雪が多い地域では、また違う品種の桑が使われます。 日本には桑の品種が700種類もあるといわれており、土地の気候や用途に応じて選ばれてきました。
桑には「3年」かかる
桑の最大の難点は、植えてから使えるようになるまで、最低でも3年かかることです。
その3年間、桑は一切収穫に使えません。 つまり、桑園をつくるというのは、完全な先行投資です。すぐに結果が出ないものに取り組む。 だからこそ、これまで誰も手を出してこなかったのだと思います。
また弊社はシルク一元化を実現させるため、少しずつではありますが実行に移しています。
養蚕、桑園単体で考えるとビジネスとしては厳しいのが現状です。ただ弊社は養蚕ではなくその先の製品。
そして
シルク産業が残してきた仕組みをより再設計することで、現代の天然繊維の常識を日本独自で形成したいと考えています。

新梢挿し木に挑戦する
今回、私たちが挑戦したのは「新梢挿し木」という方法です。
タイミングは、春蚕が終わった6月9日〜6月19日頃。
やり方はこうです。
- ポットに赤玉土(小粒)を敷く
- 枝を15〜17cm、葉を2枚残してカットする
- 赤玉土に挿し、土を乾かさないようにする
- 遮光シート(50%)か、不織布を2重にして覆う

その後、枝はこんな変化をたどります。
葉が萎れる → 葉が落ちる → 枝だけになる → 内部で発根準備
葉が落ちて枝だけになる姿は、一見「失敗した」ようにも見えます。 けれど、これは発根のための、いわば「静かな準備期間」です。
今のところ、一本も枯れていません。 このまま、しっかり根づいてくれることを願っています。

一からつくる、という選択
桑を一からつくるのは、正直なところ簡単ではありません。 時間もかかるし、手間もかかります。
でも、桑畑がなければ、養蚕は始まりません。 そして桑畑がなければ、これから養蚕を始めたいという人の選択肢も、生まれません。
私たちは、そこから始めることにしました。
今現在15日目ですが、無事70%くらいの発芽率になります。

桑から、製品まで。私たちが見ている一本の線
ここまで読んでいただいた桑の話は、正直「地味」です。 即効性もないし、3年は収穫すらできません。
でも私たちにとって、これは商品開発の最初の1ページです。
桑を育てる → 蚕が育つ → 繭ができる → 糸になる → 製品になる。
この一本の線が途切れずにつながっているからこそ、ISILKの製品には「国産シルク一元化」というストーリーが乗ります。
その線の先にある、今の2つの形がこちらです。
🌿 BLACKLETTERS(フレグランス) 秩父のクロモジをはじめ、地域の植物資源から生まれた国産フレグランス。 桑畑と同じ土地に根づく、もう一つの「秩父の香り」です。 👉 BLACKLETTERS はこちら
🧶 SHELOOK(シルクニット) 桑から育てた繭、そこから生まれる糸を使った、国産シルクニット。 今回の挿し木は、この先のSHELOOKの製品を支える「原料づくり」そのものです。 👉 SHELOOK はこちら
桑のその先に何が生まれるのか。 ぜひ、製品の方からも覗いてみてください。
