秩父のミューズパークから始まる、もう一度“人が集まる秩父”を目指して
はじめに|なぜ今、秩父ミューズパークなのか?
「秩父を、もう一度第二の箱根のような場所に」
そんな想いとともに注目したいのが、長らく忘れられた存在となっていた『秩父ミューズパーク』です。かつて西武グループが夢見たこの広大なテーマパークは、今なお可能性を秘めたまま、静かに山間に佇んでいます。
この記事では、秩父という地域の魅力と変遷、ミューズパークの歴史、そして「今だからこそできる活用のかたち」についてお伝えします。
秩父を支える2つの鉄道と観光の伸展
秩父には現在、2つの鉄道会社があります。
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秩父鉄道:三峰口〜熊谷〜羽生を結び、SLパレオエクスプレスの汽笛が今も響く。
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西武鉄道:西武秩父線と池袋線を経由し、都心と直通運行(特急ラビュー)で約80分。
2010年以降、西武鉄道は吉高由里子さんや土屋太鳳さんを起用したCM戦略などで、秩父を「週末の小旅行地」として強く打ち出してきました。その成果もあり、「あの花(あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない)」などの舞台化で聖地巡礼が起き、観光客は大きく増加。
さらに秩父夜祭・芝桜の丘・三峯神社などが話題を呼び、秩父は観光地としての地位を確立しつつありました。
ミューズパークの成り立ちと「止まった時間」
『秩父ミューズパーク』が開園したのは1991年。西武鉄道と埼玉県が共同開発した広大な複合型レジャーパークです。
375ヘクタールの敷地には、音楽堂、プール、テニスコート、児童公園、コテージ、スカイトレイン、噴水広場まで完備。まさに“自然と文化の共生”を体現する都市型パークでした。
しかし、立地の問題、移動手段の不便さ(バス本数・車社会)、観光動線との分離などにより集客は伸び悩み、赤字が続きました。そして2006年末、西武グループはミューズパークを秩父市に無償譲渡。その夢は、ひとまず終わりを迎えたのです。
幻となった軽井沢延伸構想と“中間拠点”としての秩父
「かつて西武秩父線の軽井沢延伸構想があった」——。
この話の出発点は、西武グループの創業者・堤康次郎氏の壮大なビジョンにあります。彼は“池袋〜秩父〜軽井沢”を1本の鉄道で結び、秩父を中継地とした一大観光ラインを構想していたと言われています。
そのビジョンの中で、秩父ミューズパークは“終着地”ではなく“中継地”として設計されていた可能性が高いのです。
しかし、JRが軽井沢まで新幹線を開通させたことでその構想は頓挫。さらにバブル経済の崩壊が重なり、西武グループは大規模なリゾート開発から撤退を余儀なくされました。
結果として、秩父ミューズパークは2006年に西武から秩父市へ無償譲渡され、現在は各施設ごとに民間委託で運営されています。
秩父が“未来の観光地”となるために
ミューズパークは失われた施設ではありません。むしろ、今だからこそ「自然」「文化」「歴史」を結び直すプラットフォームになり得ます。
秩父には:
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養蚕から始まった繊維の歴史(秩父銘仙)
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クロモジやニオイコブシなどの植物資源
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年間300を超える地域祭り
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三峯神社や羊山などの霊性と四季の自然
これらを“点”ではなく“面”でつなぎ、訪れた人が「秩父らしい体験」を一度に味わえる場としてミューズパークを再編集できないか——そんな問いが芽生えます。
地域資源を活かした小さな成功例:BLACKLETTER
その第一歩として、秩父産クロモジを使用したフレグランスブランド「BLACKLETTERS」が誕生しました。森林浴のような落ち着きと、日本古来の香木の魅力を伝える和精油の香り。
BLACKLETTERSは「秩父の自然が生む香り」をテーマに、観光・土産・感性体験として新たな価値を創出しています。
今後、こうした“地域のめぐみ”を集約して発信する拠点として、ミューズパークが再びその役割を果たせたなら。
ミューズパークで行われた植樹祭と、未来への兆し
2024年5月には、秩父ミューズパークにて天皇皇后両陛下をお迎えし、全国植樹祭が開催されました。会場となった音楽堂前の広場には、全国から集まった来場者や関係者の熱気が広がり、クロモジやケヤキなどの木々が未来へ向けて植えられました。
この植樹祭は、「持続可能な森づくり」「人と自然の共生」をテーマとするもので、まさにミューズパークの今後の方向性とも重なります。過去のリゾート開発とは異なり、地域の環境資源と共に未来を育てる視点が、ここに根付き始めているのです。
このような動きは、秩父を再び“未来のモデルケース”へと導く第一歩になるかもしれません。
おわりに|もう一度、人が集まる秩父へ
バブルの夢、観光開発の限界、少子高齢化、地域資源の分断—— 過去を振り返れば、課題も多く見えてきます。
しかしそれでも、「自然」「手仕事」「香り」「体験」を通して、秩父にはまだ“届けるべき魅力”がある。
秩父ミューズパークの復活は、ただの施設再生ではなく、“点在する秩父の資源を束ねなおす未来の起点”になり得ると信じています。
小さな火を灯すように、一歩ずつ秩父の再編集を始めていけたらと願っています。
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