伝統を編む:八王子・森田商店の撚糸技術とSHELOOKが紡ぐシルクの未来
2018年、秩父シルクの海外発表プロジェクトに携わった際、碓氷製糸の方を通じて、八王子の撚糸職人・森田商店の森田さんをご紹介いただきました。
その時にお願いしたのが、絹糸を使ったニット用の撚糸づくり。
風合いや肌触りの繊細さが求められるこの工程は、まさに熟練の職人技でした。
あれから7年。SHELOOKのニット製品がかたちになる今、改めて森田商店を訪れ、伝統技術と再び向き合う機会を得ました。
撚糸とは?|糸に“個性”を与える加工
撚糸(ねんし)とは、1本または複数の糸に「撚り(より)」をかけて、強度や風合いを調整する工程です。
🔹 S撚り(時計回り)
🔹 Z撚り(反時計回り)
撚る方向や強さによって、仕上がる糸の表情はまったく異なります。撚糸が加わることで、ニットや織物に「ふんわり感」や「シャリ感」といった独特の肌触りが生まれるのです。
森田商店の撚糸技術|伝統と個性を活かす職人の手
八王子に工房を構える森田商店は、小ロットのオーダーにも応える撚糸専門の職人集団です。大量生産に傾く業界の中で、森田商店はあえてアナログな撚糸機を使い続け、1本1本の糸に合わせた微調整を行っています。
🧵 なぜ“古い機械”にこだわるのか?
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機械が柔らかく動くため、シルクの風合いを壊さない
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職人の「手」と「耳」で撚り具合を調整できる
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糸の個性を活かす“揺らぎ”が表現できる
これは、最新のデジタル制御の機械では再現できない世界です。
意匠撚糸の魅力と技法
森田商店では、意匠撚糸と呼ばれる装飾性の高い撚糸加工も行っています。
代表的な技法には:
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スラブヤーン(不規則な太さ)
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ループヤーン(輪状の撚り)
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スレットヤーン(繊細な装飾撚り)
これらは、素材本来の良さにデザイン性を加え、ファッションやラグジュアリーテキスタイルで重宝されています。
カール
スレットヤーン
ロングスレット
ループヤーン
スラブヤーン
壁糸
これらの技法を駆使することで、撚糸はより個性的で特徴のある仕上がりになります。
撚糸機の仕組みと種類
🔧 撚糸機の基本的な構造
撚糸機は、糸を一定の速度で送りながら回転を加えることで撚りを生み出す仕組みです。
🔹 モーターとベルト駆動
→ モーターの回転をベルトで伝達し、機械全体を動かします。
🔹 スピンドル(紡錘)
→ 糸を高速回転させて均一な撚りをかけます。
🔹 リングとトラベラー
→ リングの内側を「トラベラー」と呼ばれるパーツが移動しながら、糸に撚りを加えます。
🔹 スピード調整機能
→ 一般的には3段階の速度調整が可能で、糸の種類や用途に応じた加工ができます。
SHELOOKのシルク製品に活かされる撚糸の力
現在、私たちのブランドSHELOOK(シールック)では、秩父産の彩繭から抽出したシルクを使用したニット系温活アイテムの展開を進めています。この中で、森田商店の撚糸技術はまさに心臓部とも言える存在です。
🧶 森田商店の撚糸が使われているSHELOOK製品:
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レッグウォーマー
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腹巻き
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靴下
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ニット帽
これらのアイテムは、撚糸による柔らかな風合いと高い保温性を両立し、肌への刺激を抑えた設計が特徴です。寒暖差や冷えに悩む女性たちに寄り添う“あたたかさの本質”を、糸の一本から考えたプロダクトです。
技術継承の難しさと未来への挑戦
撚糸技術の継承には以下の課題があります。
📌 機械の扱いが難しく、熟練した職人の勘が必要
📌 天候や糸の種類に応じた微調整が不可欠
📌 最新の機械では再現できない独特の風合い
森田商店は、職人の育成に力を入れながら、伝統を未来へつなげるための努力を続けています。
香りのものづくりへ|BLACKLETTERSとの共鳴
撚糸によって編まれたシルクの衣服が“からだを包む”存在ならば、香りは“空気をまとう”存在。
同じ秩父の恵みを活かした香りのブランド「BLACKLETTERS(ブラックレターズ)」では、クロモジなどを使った天然香料の香水やお香を展開しています。
どちらも「素材の力」を引き出し、「本物の手仕事」を守るものづくりという点で共鳴しています。
まとめ|伝統と未来が撚り合わさるものづくりへ
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森田商店の撚糸は、機械と人の技術が融合する工芸
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SHELOOKのニット製品は、その技術を活かした“着る温活”アイテム
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BLACKLETTERSの香りとともに、五感を整えるライフスタイルを提案
手間ひまを惜しまないものづくりの背景には、名もなき職人たちの技と知恵があります。
それらを受け継ぎ、日々の暮らしの中に届けていくことが、私たちの目指すブランドのかたちです。