秩父銘仙とは?大正ロマンを織り上げた伝統織物の魅力と今
秩父の織物で有名な「秩父銘仙」とは
― 大正・昭和に人気を博した伝統織物とISILKの原点
秩父といえば豊かな自然や祭りで知られる地域ですが、もう一つ忘れてはならないのが「秩父銘仙(ちちぶめいせん)」という伝統的な絹織物です。
かつて全国的に広まり、庶民の普段着として親しまれていた秩父銘仙は、実はISILKブランドを立ち上げる原点でもありました。
ISILKと秩父銘仙の出会い
ISILKを始めたきっかけは、親戚の「横山織塾工房」の横山さんに声をかけられ、秩父銘仙のデザインに関わるようになったことでした。最初は知識もない中で、古い織物のコレクションを見ながら、その奥深い歴史や技術に触れ、デザインを学んでいくことになりました。
秩父には、絹とともに歩んできた文化が息づいています。その魅力を再定義し、現代のライフスタイルに合うかたちで提案する——それがISILKの始まりでした。
銘仙とは? 〜経糸にプリントする“解し捺染”の技法〜
銘仙は、秩父のほか足利や伊勢崎など、北関東に多くの産地が存在した絹織物です。通常のプリント生地が布に後から柄を乗せるのに対し、銘仙は「絣(かすり)」という技術を使って、経糸にあらかじめ模様をプリント(捺染)し、蒸して色を定着させ、その後に緯糸を通して織り上げていきます。
この工程により、経糸と緯糸が重なった際に生まれる「柄のズレ」が、銘仙独特の味わいとなります。量産では出せない、この揺らぎや奥行きが多くの人々を魅了してきました。
大正・昭和の流行とアール・デコの影響
秩父銘仙は、矢羽や麻の葉といった古典的な柄が多く見られました。一方で、伊勢崎や足利では、当時のフランスで流行していた「アール・デコ」様式にインスパイアされたモダンでカラフルな柄が多く織られました。
当時の秩父は、繭の生産地として八王子や横浜を経由してフランスなどに輸出しており、その関係から秩父にフランス人が設立した学校があったほど。そうした文化交流が、銘仙のデザインにも影響を与えていたのです。
鮮やかな色彩や幾何学的な柄、モネやゴッホなどの印象派の色使いが着物に取り入れられ、ファッションと芸術が融合した時代の香りを感じられるのも、秩父銘仙の魅力のひとつです。
伝統技術「併用絣」の美しさと継承の危機
秩父銘仙の中でも特に高度な技術が「併用絣(へいようがすり)」です。これは経糸と緯糸の両方に柄を合わせて染める手法で、織り上げると立体感のある鮮明な模様が浮かび上がります。
しかしこの技術は極めて手間がかかり、今では全国でも織れる職人がほとんどいません。まさに“絶滅危惧技術”とも言えるもので、現在は横山織塾工房の横山さんが継承と技術のアップデートに力を注いでいます。
秩父の機屋たち 〜技術と精神を未来へ〜
現在も秩父で銘仙の技術を守り続けているのは、以下のような織元です:
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辺見織物:平織をベースに、多彩な製品展開を行う
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新啓織物:予約制で体験も可能
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横山織塾工房:高度な併用絣の技術継承に挑戦中
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Magnetic Pole(マグネティックポール):養蚕から座繰り、織りまで自社一貫。世界市場への展開を視野に入れる若手チーム
各社がそれぞれの美意識と哲学を持ち、シルクに対する真摯な姿勢でものづくりに取り組んでいます。

ISILKと秩父銘仙のつながり
SHELOOKやBLACKLETTERSを展開するISILKのものづくりの根幹には、秩父銘仙との出会いがあります。創業者自身が、親戚の職人からの誘いをきっかけに織物の世界に触れ、歴史や技術への理解を深める中で、ブランドのビジョンが形作られていきました。
こうした背景があるからこそ、SHELOOKではテキスタイルに込められたストーリーや職人の技を日常に届けるアイテムを生み出し、BLACKLETTERSでは香りという形で秩父の自然と感性を表現しているのです。
まとめ:秩父銘仙から広がる五感の旅
秩父銘仙は、技術・芸術・文化が融合した、日本が世界に誇る伝統工芸のひとつです。過去から現在、そして未来へと受け継がれるこの織物の世界に触れることで、日常の中にある美しさや丁寧な暮らしの価値を再認識できるでしょう。
私たちISILKが提案するのは、ただの「商品」ではなく、「秩父を感じる体験」。織物と香りを通じて、あなただけの五感の旅を、ぜひ見つけてください。
▶︎ SHELOOK公式サイトで、秩父銘仙にインスパイアされたライフスタイルアイテムを見る
▶︎ BLACKLETTERS公式ページで、秩父の森の香りに包まれる
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