日本における香水の売れない理由についての探求

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日本において、香水の市場は他国と比較して縮小傾向にあります。本記事では、その理由を文化的背景、市場動向、消費者の嗜好の変化という視点から探ります。

 

 

 

日本の香水市場の現状

日本の香水市場は、欧米や他のアジア諸国と比べて小さいことが知られています。特に若年層を中心に、香水を日常的に使用しない傾向が見られます。

 

2022年の見込みによれば、日本の香水市場は392億円の規模であり、前年比2.6%の成長を見せています。

 

しかし、この数値はルームフレグランスカテゴリーなど他の香り関連市場と比較して小規模です。新規ユーザーの獲得に苦戦し、生活者に新習慣として「香り」を定着させるのが難しい状況となっています​。

 

 

文化的背景と香水

日本の文化では、控えめで自然な美しさが好まれる傾向があります。これが、香水の使用を控える一因となっていると考えられます。

 

日本の香り文化は古代インドから伝わり、奈良時代には香りを仏前に備える文化が根付きました。

 

平安時代には貴族の間で日常的に香りを楽しむ文化が始まり、香料を混ぜてオリジナルの香りを作る「薫物合わせ」という遊びも行われていました​​。

 

また、香道という伝統文化があり、香りを「聞く」と表現することからも、日本における香りの楽しみ方が独特であることが伺えます​​。

 

これらの情報を踏まえると、日本における香水の売れない理由は、文化的背景と香りに対する独特の観点、消費者の嗜好と使用頻度の低さにあると考えられます。

 

 

簡潔にまとめると、日本人は特に無臭文化であり、体臭があまり外国の方と比べて少ない点。もう1つの理由は海外の人と違い水が豊かなため毎日お風呂に入る習慣があることに繋がります。

 

 

また、新しい香り文化を創り出す試みも注目されており、例えばライオンの「By me」ブランドでは、ファブリックケア製品に香りのエッセンスをブレンドしてカスタマイズできる新しいアプローチが取られています​​。

 

このように、日本の香水市場は変化の兆しを見せつつも、根強い文化的な価値観や消費者の嗜好によって独特の挑戦が求められています。

 

ライオンの「By me」はこちら

 

日本と他国、特にフランスとの香水市場および文化的違い

香水の文化的取り入れ方の違い

日本では香水はファッションの一部として扱われ、おしゃれの最終仕上げや気分でつけるものという位置づけです。

 

一方で、フランスでは香水は生活の一部であり、マナーとして取り入れられています。小学生のうちから香水を使い始め、毎日の身だしなみの一環として香水をつけるのが一般的です。

 

香水の使用目的の違い

海外では体臭を消す目的で香水を使う傾向があり、特にフランスでは体臭を香水の香りと混ぜて楽しむ文化があります。

 

これに対し、日本ではメイクや髪型に力を入れ、香水は必須ではなく、つけるかどうかは個人の選択に任されています。

 

 

 

香水のマーケティング戦略の課題

日本市場においては、香水のマーケティング戦略が欧米市場と異なる必要があります。しかし、多くのブランドはこの点を見落としています。

 

日本における香水のマーケティング戦略の課題は、主に商品の性質と売り方の二つの側面に分けられます。

 

 

  • 商品の性質: 日本市場においては、生産の安定性や原価率の低減を考えた結果、合成香料を多用し、強い香りを持つ製品が多く市場に出回っています。しかし、これらの強くて長く続く香りが日本の消費者の嗜好に合わなかった可能性が高いです。

 

 

  • 売り方の問題点: 従来の香水の販売方法は、ブランドロゴや広告頼りの自己選択型販売か、過度に丁寧なカウンセリング販売のどちらかでした。これに対し、より高度な知識を持つスタッフによるフレンドリーな接客や、セミセルフ方式(顧客がテスターを嗅ぎながら自分で製品を選べる方式)が日本市場に適していると考えられています。

 

 

消費者の嗜好の変化

近年、日本の消費者はよりパーソナライズされた製品に興味を示しています。この変化が香水市場に与える影響は大きいです。

 

個々のニーズへの対応: コロナ禍で屋内で過ごす時間が増え、個人の好みに合った製品への関心が高まっています。例えば、オルビス株式会社の新ブランド「HELENUS(ヘレナス)」は、個々の肌の匂い(スキンセント)に着目し、自然ないい匂いの人を目指すボディオイルを発売しています。

 

このような製品は、個人の特性や好みに合わせた香りを提供し、消費者のパーソナライズされた需要に応えています。

 

 

結論と今後の展望

香水市場の成長には、日本の文化と消費者の嗜好を理解し、それに合わせた商品開発とマーケティング戦略が求められます。

 

コロナ禍ではパーソナライズされた商品や、お客様のご要望に応じてその場で配合するなど、より香りを身近に感じてもらえるような文化もできつつあります。

 

そういったものが、体験できる場の提供や香水が原価率や安定性を重視した結果合成香料を多用し、その香りで気持ち悪くなったりする要因を作っているのも事実です。

 

例えばBLACKLETTERS(ブラックレターズ)というブランドでは日本で取れる天然の黒文字の精油をベースに香水を展開しています。より日本人にとって親しみが感じられる香水が今後求められると考えています。

 

 

この記事を書いた人

堀口 智彦

埼玉県秩父市出身。大学在学中独学で洋服デザインを学ぶ。2007年に渡英しLCF卒業後帰国し自身のメンズブランドを設立。2015年にブランドを休止し、企業にてチーフデザイナーとして3年間従事。その後シルクと黒文字に出会い、現在は株式会社ISILKの代表取締役。

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