桐生織物の伝統と革新|桐生絹機と桐生刺繍の魅力に迫る

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日本有数の織物の街 「桐生」。古くから繊維産業が盛んで、「西の西陣、東の桐生」とも称されるほどの歴史を誇ります。

今回は、桐生の機屋である「桐生絹機株式会社」様を訪れ、織物産業の現場を見学させていただきました。

 

また、桐生の刺繍技術を活かしたブランド 「株式会社笠盛(トリプルオー)」 にも足を運び、その革新的な取り組みにも触れることができました。

 

本記事では、桐生の織物・刺繍の魅力、現場で感じたこと、今後の秩父での取り組みにヒントを得たことをお伝えします。

 

桐生絹機|伝統と革新が共存する織物工場

今回訪れた 「桐生絹機」 は、4代続く歴史ある織物工場です。まず目を引いたのは、ノコギリ屋根のレンガ造りの工場。広々とした敷地には、ジャガード機やシャトル機が並び、今もなお丁寧に生地が織られています。

 

 

特に印象的だったのが、伝統的な 紋紙が動く機械 から、最新の コンピュータージャガード まで、異なる時代の機械が共存していること。職人の技術と現代のテクノロジーが融合し、高品質な織物が生み出されていました。

 

https://www.instagram.com/kiryu.kensyoku/

 

さらに、工場の奥には 観光客向けの織物体験施設 も用意されており、桐生織物の魅力をより多くの人に知ってもらうための取り組みが行われています。

 

歴史ある建築を活かしたリノベーションのセンスも抜群で、伝統を守りつつも新しい挑戦を続ける姿勢に感銘を受けました。

 

 

 

桐生の織物産業|歴史と現状

桐生は、刺繍や織物の産地 として有名です。織物を作るには多くの工程が必要ですが、特に重要なのが 「整経(せいけい)」 という作業です。

 

整経とは、織機にセットする前に、経糸(たていと)を適切な長さや本数に揃え、均等な張力をかけて巻き取る工程 のこと。これを丁寧に行うことで、生地の品質が大きく左右されます。その後、経糸を一本一本通して織る準備を整えるため、非常に多くの時間と手間がかかります。

 

かつて、織物工場では 「ガチャマン」 という言葉が使われていました。これは、機織りの「ガチャガチャ」という音と「1万円(マン)」を掛け合わせたもので、一回機械が動くと1万円の利益が出るほど景気が良かった時代 を表しています。しかし、現在は中国や東南アジアの台頭により、国内の繊維産業は縮小を余儀なくされています。

 

それでも、桐生にはいまだに 質の高い織物を生産する機屋が残り、伝統を守り続けています。こうした機屋の努力によって、桐生織物は国内外で高い評価を得ています。

 

 

桐生刺繍の可能性|笠盛(トリプルオー)の挑戦

今回の訪問で、もう一つ特に印象に残ったのが、桐生の刺繍技術を活かしたブランド「笠盛(トリプルオー)」 です。事前のアポイントなしで訪れたにもかかわらず、快くショップを開けていただき、商品を見せていただきました。

 

YouTubeで見て気になっていたのが、お湯に浸すと溶ける生地に刺繍を施す技法。これによって、まるでパールのネックレスのような刺繍アクセサリーが生まれます。金属アレルギーの方でも安心して身につけられるデザインで、非常に画期的な商品でした。

 

 

さらに、若い世代の職人が活躍している のも印象的でした。彼らは、伝統的な技術に革新的なアイデアを加え、新しい価値を生み出す挑戦 を行っています。

 

 

例えば、従来の刺繍技術を活かしながら、アクセサリーやアート作品としての可能性を広げたり、最新の素材を組み合わせるなど、独自のアプローチで刺繍の魅力を発信しています。

こうした動きが、繊維業界の未来を切り拓くカギになるのではないか と感じました。

 

 

また、現場で話を聞く中で、撚糸(ねんし) の課題についても考えさせられました。通常、撚糸屋はロットが大きいため、小規模な織物工場では夫婦で営んでいるような小さな撚糸屋に依頼することが多いそうです。

 

しかし、そうした撚糸屋も廃業が進んでおり、今後は小ロットでオリジナルの撚糸を作ることが難しくなる可能性 があります。

 

繊維産業を未来へつなぐためには、単に織る技術を守るだけでなく、素材となる糸の供給体制をどう維持していくか という視点も重要になってくると実感しました。

 

日本の繊維産業の未来|織物業界の課題と展望

織物産業には、染色、整経(せいけい)、製織(せいしょく)、整理加工、仕上げ、検査、機械メンテナンス、試験場 など、多くの工程があります。特に、品質の高い織物を作るためには、各工程が専門の職人や業者によって適切に分業されることが不可欠です。

 

しかし、秩父をはじめとする地方では、これらの工程を担う業者がほぼいなく、一貫生産が難しいのが現状です。例えば、整経を専門に行う業者が減ると、機屋は自社で設備を持つ必要があり、コストや時間の負担が増します。

仕上げ加工を担う業者が減れば、織った生地の最終品質を高めることが難しくなります。こうした問題が織物産業全体の課題となっています。

 

今回の訪問を通じて感じたのは、「織物産業を未来へつなぐためには、伝統を守るだけでなく、新たな挑戦が必要」 だということです。

 

例えば、桐生絹機のように 観光と織物を融合させる取り組み や、笠盛様のように刺繍技術を活かして新しい商品を生み出す挑戦 など、時代に合ったアプローチが求められています。また、職人の技術を次世代へ継承するための教育や、設備投資を支援する仕組みづくり も重要です。

 

日本の織物産業は決して衰退しているわけではありません。むしろ、伝統と革新が共存し、新しい価値を生み出すチャンスが広がっている と強く感じた一日でした。

 

まとめ

今回の桐生訪問を通じて、織物や刺繍の世界における 「伝統」と「革新」 の共存を実感しました。桐生絹機の織物工場、笠盛の刺繍ブランド、それぞれが独自の挑戦を続けながら、未来へと繋がる技術を育てています。

日本の繊維産業が再び活気を取り戻すためには、こうした 新しい取り組みを発信し、より多くの人に知ってもらうことが重要 です。桐生を訪れたことで、改めて日本のものづくりの魅力と可能性を感じることができました。

 

今後も、伝統産業の現場を訪れ、その価値を発信していきたいと思います。

 

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この記事を書いた人

堀口 智彦

埼玉県秩父市出身。大学在学中独学で洋服デザインを学ぶ。2007年に渡英しLCF卒業後帰国し自身のメンズブランドを設立。2015年にブランドを休止し、企業にてチーフデザイナーとして3年間従事。その後シルクと黒文字に出会い、現在は株式会社ISILKの代表取締役。

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