撚糸の伝統と八王子の森田商店｜今も息づく職人の技

公開日：2025.03.5

2018年、秩父シルクを海外に発表するプロジェクトに関わった際、碓氷製糸の方から八王子の撚糸屋「森田商店」の森田さんを紹介していただきました。そのとき、絹糸を使ったニット用の糸を作っていただいたことがご縁となり、それから7年後の今、改めてご挨拶に伺いました。

八王子に今も残る撚糸の技術、そして森田商店が守り続ける伝統について詳しくご紹介します。

八王子と織物産業の歴史

八王子は、かつて「織物の町」として栄え、多くの機屋（はたや）が存在しました。江戸時代から織物産業が盛んで、明治・大正時代には全国的に知られる産地となりました。しかし、時代の変化とともに繊維業は衰退し、多くの織物工場や撚糸屋も姿を消していきました。

そんな中、今もなお八王子の地に根ざし、撚糸の技術を守り続けているのが森田商店です。

撚糸とは、糸に撚り（より）をかけることで強度や風合いを調整する加工技術です。

撚糸には、以下の2種類の基本的な撚り方があります。

✅ S撚り（時計回りに撚る）

✅ Z撚り（反時計回りに撚る）

この撚りの違いによって、糸の風合いや仕上がりが大きく変わります。

現在では海外からの輸入糸が増えていますが、日本国内で職人の手によって施される撚糸技術は、品質の高さと独自の風合いで評価されています。

📌 詳しい撚糸記事はこちら → 撚糸について詳しく解説

意匠撚糸（いしょうねんし）とは、特殊な撚りを加えて装飾的な風合いを持たせた撚糸のことです。以下のような種類があります。

カール

スレットヤーン

ロングスレット

ループヤーン

スラブヤーン

壁糸

これらの技法を駆使することで、撚糸はより個性的で特徴のある仕上がりになります。

撚糸機は、糸を一定の速度で送りながら回転を加えることで撚りを生み出す仕組みです。

🔹 モーターとベルト駆動

　→ モーターの回転をベルトで伝達し、機械全体を動かします。

🔹 スピンドル（紡錘）

　→ 糸を高速回転させて均一な撚りをかけます。

🔹 リングとトラベラー

　→ リングの内側を「トラベラー」と呼ばれるパーツが移動しながら、糸に撚りを加えます。

🔹 スピード調整機能

　→ 一般的には3段階の速度調整が可能で、糸の種類や用途に応じた加工ができます。

1️⃣ リング撚糸機（イタリー式）

✅ 均一な撚りをかけやすい

✅ 強度のある糸に適している

2️⃣ カバーリング撚糸機

✅ 1本の芯糸に別の糸を巻きつける

✅ ゴム糸や光沢感のある糸に使用

3️⃣ ダブルツイスター（倍撚機）

✅ 2本の糸を同時に撚ることで生産効率UP

✅ 合成繊維の大量生産向け

4️⃣ 逆撚機（リバースツイスター）

✅ 風合いを柔らかくするために使用

✅ シルクやウールなどに適している

近年、撚糸機も進化し、デジタル制御による自動撚糸機が登場しています。これにより、大量生産の現場では効率化が進んでいますが、伝統的な撚糸機には以下のような魅力があります。