養蚕農家とシルク。シルクを使ったビジネスの構築とは?

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養蚕農家とシルク

本日WWDの記事を見て、思い立って書いています。

STUDIOUSを展開しているTOKYOBASEの取締役の方が、養蚕業を始動といった内容でした。

とてもいい話題であり、色々な人がシルクに携わってくれることが今後のシルク産業の衰退に少しでも歯止めをかけることができればと考えています。ただ化粧品は繭を多くは使わないのであまり養蚕業をするほどのものではないかとは思います。

 

そういった記事を読んだ時に2018年から色々と弊社が設立するまでの過程でシルクに携わり、洋服や真綿に出会い、また養蚕農家の可能性と色々なことに出会い体験したことを少し書こうと思います。

 

今回は洋服はなかなか値段がはまらないというお話もしていましたので、そこにも深く突っ込んでいきたいと思います。

シルクをする上でまず重要になってくるのが、昔からある利権。天皇家も関わっていることから養蚕はとても敷居の高いイメージもあります。

 

 

以前テレビで北海道の酪農で、基本的に卸先はJAを通さないと全国に牛乳を売ることができないというものを見た記憶があります。

 

JAを通さずに売ろうとすると基本的には邪魔をされるか買い手がつかなくなり、基本的に継続が難しい。そのためそれ以上ビジネスとして競争もなくなり、現状としてはよくも悪くも現状維持。

 

養蚕業もそういった傾向が強かったように感じましたが、今は繭をJAが管理しても売り先が少なくなってきた関係もあり慈善事業になってしまっている部分も多くあると思います。

 

 

まずシルクの糸には2種類の糸があります。他にもありますが、一旦は2種類でいいでしょう。

 

シルクという化粧品原料のすごさ

 

生糸撚糸:フィラメントシルク
繭を製糸し、引き出した極細の糸(一本の長繊維)を数本そろえて撚糸したもの。一般的なシルクのイメージ。分類的には長繊維で着物に使われることが多いです。

 

 

上記糸を作る際はまず、出来上がった繭を乾燥機にかけ、中にある蛹が蛾になって出てくる前に悪く言えば殺してしまいます。これをサスティナブルと捉えるかどうか。動物虐待等謳われていて毛皮がダメと言われているが、昆虫はOKなのか?すごく議論が難しいと私自身もかんがてしまいます。

 

 

その糸の中に死に繭と言って繭の中で蛹が死んでいないかどうかを光を当てて分別をしていきます。

 

 

 

分別されたものはお湯の中に入れてふやかし糸を取りやすくします。その過程で糸を取りやすくするため重曹を使ったり、薬品を使ったりするところもあるそうです。

 

大体7中と言われ7個の繭から1本の糸を作るようになっています。これは最初は知識がなく全くわかりませんでした。例えば35中とか言われる時がありますが、下記がその説明です。

 

「35/中」とは、7個の繭を使用 ×平均5デニール = 35が中心のデニールの糸です。
7個全てが3デニールの場合は、7 ×3 = 21デニール
7個全てが7デニールの場合は、7 × 7 = 49デニール
よって最大番手差は、28デニールとなります。

「35/40片」とは、7個の繭を使用 ×平均5デニール = 35 ×40本 = 平均1400デニールの糸です。
7個全てが3デニールの場合は、7 ×2 = 21デニール × 40本 = 842デニール
7個全てが7デニールの場合は、7 ×7 = 49デニール X 40本 = 1960デニール
よって最大番手差は、1118デニールとなります。

 

ストッキングでデニールという呼び方をすると思いますが、繊維の太さを表す単位のことです。「9,000メートルで1グラムの糸」=「1デニール」、「9,000メートルで20グラムの糸」=「20デニール」デニール数が高いほど太い糸になります。

 

その糸を巻き上げてまず絹糸ができます。

 

そのあと撚糸という作業があります。撚糸屋は今小ロットでやってくれるところが八王子に1件。それ以外はわかりません。福島や茨城にあるとは聞きました。ロットが多ければ碓氷製糸株式会社でもやってくれます。

 

その撚糸をすることで初めて糸になります。ただまだここで終わりではありません。

 

糸として使うためには精錬という工程が残っています。私がお願いしたのは京都にある山嘉精錬さん。無理を言って少ないロットでお願いしてやってもらいました。

 

初めて糸になった時には感動はしましたが、やはりニットにはできないとおもってしまいました。絹紡糸の方がニットに向いているのはわかっての挑戦でした。

 

結果は製品にしたけれども、自分が想像していた高級感というところには行き着きませんでした。
コストはなんとかハマりそうだとは思いましたが、これだけ工程があるとなかなか難しいのが現実でした。

絹紡糸:スパンシルク
生糸を製造する際に出る副蚕糸を使用し、紡績して製造する絹糸。
分類的には短繊維。生糸撚糸に比べて嵩高でふんわりとした触感。

 

さて、多分というか絶対やらなければいけないのは絹紡糸。ではなぜこれが作れなかったか?かなり頑張りましたが、絹糸の方が簡単だったんです。なぜなら繭を切って蛹を出してそれを綿上にした上で糸にしていくため上記に記載されている長繊維ではなく短繊維。

 

光沢感もしっかり出てカットソーやニットに使える糸になります。しかも最低加工重量が20キロ。大したことないと思いますが、10キロの繭をカットして蛹を出すと、重さが繭だけの重さになるため大体3/1以下になります。なので10キロで4キロくらいの繭になってしまいます。

 

繭は大体春、夏、秋、冬の年4回作ります。しかし一番量が取れるのが春と夏になります。そのため昔の人はいい繭は絹糸、クズ繭と言われているものは絹紡糸になっていました。

蛹の脂分はすごくて、乾燥させないの繭と一緒に切ってしまい繭が汚くなったりもします。昔使っていた繭切り機を購入しやりましたが、もっと性能の良いものを作らないといくら時間があっても足りないと感じたもの事実で途中で断念しました。

 

今は自分でやらず、シルバーや施設にお願いして蛹と繭を分けてもらう作業をしていただくことで仕事を与えることができ、それが仕組み化できればすごくいいなあと考え行動しようと考えています。

 

 

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この記事を書いた人

堀口 智彦

埼玉県秩父市出身。大学在学中独学で洋服デザインを学ぶ。2007年に渡英しLCF卒業後帰国し自身のメンズブランドを設立。2015年にブランドを休止し、企業にてチーフデザイナーとして3年間従事。その後シルクと黒文字に出会い、現在は株式会社ISILKの代表取締役。

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