香水の聖地グラース――革の町が香りに包まれるまで

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南フランスの小さな町グラース(Grasse)は、「香水の都」として知られ、世界中の調香師や香水愛好家が憧れる聖地です。

 

花の香りに包まれたこの町は、長い年月をかけて香水産業の中心地へと発展しました。しかし、もともとは香りとは無縁の「革なめし」の町だったことをご存知でしょうか?

 

この記事では、グラースが香水の都へと進化していった歴史をひもときながら、その香りの哲学が現代のブランドにもたらす影響についてご紹介します。

 

 

 

革なめしの町から香水の都へ

グラースは12世紀ごろから革なめし産業で栄えた町でした。高品質な革を生産していた一方で、その強烈な臭いが上流階級には敬遠されていました。

 

そこで、地元の職人たちは革手袋に香料をしみ込ませ、臭いを和らげる工夫を始めます。この「香り付き手袋」は次第にフランス貴族の間で流行し、実用性と優雅さを兼ね備えた贅沢品として定着していきました。

 

この革手袋から派生した香料産業は、17世紀初頭に大きな転機を迎えます。1614年、グラースの香り付き手袋製造業者は正式に「手袋・香料産業同業組合(Corporation des Gantiers Parfumeurs)」の名称を得て、市場での地位を確立。これにより、グラースは香水産業の町として本格的な一歩を踏み出しました。

 

 
 

ルネッサンス期と香りの文化

中世からルネッサンス期にかけて、人々は入浴を避ける傾向があり、その代わりに香水を身体や衣服、家具に振りかけて体臭を隠していました。中でも重要な役割を果たしたのが、イタリアからフランスに輿入れしたカトリーヌ・ド・メディチです。

 

彼女は自身の専属調香師ルッジェーリ兄弟と共にフランスに渡り、香水文化を王侯貴族の間に広めました。この動きが、イタリア中心だった香料文化をフランスへとシフトさせるきっかけとなり、南仏・グラースの台頭につながっていったのです。

 

花々が香る南仏の恵み

18世紀に入ると、グラースの革なめし産業は衰退する一方で、香料生産はますます活性化していきます。温暖な気候と美しい丘陵地に恵まれたこの町では、バラ、ジャスミン、チュベローズ、ラベンダーなど、香水に欠かせない花々の栽培が盛んに行われました。

 

これらの花から抽出された天然香料は、グラースの香料会社によって精製され、世界中の香水メーカーに供給されました。その結果、グラースは「香水の都」としての地位を不動のものにしていきます。

 

 

現代に引き継がれる香りの文化

現在のグラースでは、香水原料の合成技術も進み、天然素材と合成香料を組み合わせた多様な香水が生み出されています。名門香料会社「ロベルテ(Robertet)」や「シャラボ(Charabot)」などもこの町に拠点を置き、フランス香水産業の中核を担っています。

 

また、グラースには香水博物館や調香体験施設もあり、香水の歴史や製造工程を体感することができます。香りに魅せられた多くのブランドがこの地にインスピレーションを得て、独自の香水文化を育んでいるのです。

 
 

BLACKLETTERSに受け継がれる“香り”の哲学

私たちBLACKLETTERSもまた、香水の都グラースに息づく“香りで人生を彩る文化”に深く共鳴しています。グラースで生まれた「香りは人格を語る」という考え方は、現代を生きる私たちにも大きな示唆を与えてくれます。

 

例えば、BLACKLETTERSでは、秩父の自然と文化に根ざした和精油を用い、香りを通して“その人らしさ”や“静けさのある贅沢”を届けています。日本の美意識とフランスの香り文化を融合させたアプローチは、単なる香水ではなく、心の在り方を整える存在としての香りを提案するものです。

 

▶︎ 香りが持つ哲学と感性に触れる → BLACKLETTERS公式ページ

 

SHELOOKが照らす、香りのもうひとつの側面

また姉妹ブランドであるSHELOOKでは、「香り=自己解放」のメッセージを軸に、もっと自由で感覚的な香りの体験を追求しています。香りは“外へ出るための武器”ではなく、“自分を満たすための内なるスイッチ”。そんな哲学は、グラースが紡いできた香水の歴史にもどこか通じるものがあります。

SHELOOKの香りは、まとう人の心を解きほぐし、本来の自分らしさを引き出すきっかけを届けます。

▶︎ 自分らしさを香りで整える → SHELOOK公式ページ

 

まとめ:グラースが教えてくれる「香りの本質」

グラースは、偶然と必要性から香水の都となり、やがて世界中の人々に愛される聖地となりました。その背景には、香りを「装い」だけでなく「精神の表現」としてとらえる深い文化的土壌があります。

その精神は、私たちBLACKLETTERSやSHELOOKが目指す「香りの在り方」にも通じており、ただ香るのではなく、香りで“生き方を選ぶ”という価値観を共有しています。

秩父の山々から南仏グラースへ——香りの旅は、今も静かに、しかし確かに続いています。

 

 

この記事を書いた人

堀口 智彦

埼玉県秩父市出身。大学在学中独学で洋服デザインを学ぶ。2007年に渡英しLCF卒業後帰国し自身のメンズブランドを設立。2015年にブランドを休止し、企業にてチーフデザイナーとして3年間従事。その後シルクと黒文字に出会い、現在は株式会社ISILKの代表取締役。

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