はじめに──伝統が現代の暮らしに息づく瞬間

私たちの暮らしには、心をふと和ませる「特別な瞬間」があります。香りに包まれる静かな時間。手に取る器が語りかけるような美しさを持つとき、その体験はより深く、豊かに広がります。今回ご紹介するのは、富山県高岡市の伝統工芸から生まれた、魔法のようなお皿「スズガミ（すずがみ）」。

BLACKLETTERSでは、このスズガミを特注し、紐お香（STRING INCENSE）専用のお香皿として展開。香りを届けるだけでなく、器そのものが香りの世界観を支える“舞台”となっています。

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錫の紙──スズガミとは？

まるで折り紙のように自由に曲げられ、形を変えて使える金属のお皿。それが「スズガミ」です。見た目は金属の板なのに、何度でも折り曲げ、形を変えることができる、まさに“魔法のお皿”。一度使えばその不思議な質感と使い心地に魅了されるはずです。

この製品を生み出したのは、富山県高岡市の老舗「シマタニ昇龍工房」。BLACKLETTERSではこのスズガミを特注し、紐お香専用のお香皿として展開しています。

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シマタニ昇龍工房と伝統工芸の再生

シマタニ昇龍工房は、もともと仏壇に置かれる「おりん」や「鏧子（けいす）」を製造する、高岡の伝統工芸を担う工房です。職人が一つ一つ金属を手で叩き、調音することで生まれる“音”の工芸。その緻密な技術が、スズガミという新しいプロダクトを生み出す礎となりました。

しかし現代では、仏具の需要減少や安価な鋳造品の流通により、こうした職人技の継承が難しくなっています。そうした状況のなか、「この技術を現代の暮らしに生かせないか」という思いから、スズガミが誕生しました。

錫という素材の革新

錫（すず）は柔らかく加工しやすい金属ですが、通常は叩くとひび割れやすいため、鍛金には不向きとされてきました。

ところがシマタニ昇龍工房では「けいす」制作の経験から、繊細に叩いても割れない技術を確立。さらに何度も圧延を繰り返すことで、自由に曲がり、折れ目がつかず、元の形にも戻せる“錫の紙＝スズガミ”が完成しました。

この素材は、器や皿、トレー、花器などさまざまな用途に応用可能。使い手が自ら手を加えることで、まさに“自分だけの器”を創り出すことができます。

デザイン思考と伝統の融合

BLACKLETTERSでは「香りのある体験」を演出するために、香りと調和する器の重要性を強く感じてきました。今回のスズガミとのコラボレーションは、まさにその理想を具現化したプロジェクトです。

BLACKLETTERSの紐お香専用に、スズガミには特注で紐を通す穴をあけていただきました。香りと器が一体となることで、視覚・嗅覚・触覚に訴える「五感のプロダクト」が誕生しました。

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香りの舞台としての器

香りが空間に広がるとき、その香りを支える器もまた、体験の印象を大きく左右します。スズガミの静かな輝きと、手に馴染む柔らかな質感は、香りの時間をより豊かに、特別なものへと変えてくれます。

インテリアとしても美しいその佇まいは、香りが消えたあともなお、空間に余韻を残します。

あなたの手で形を創るという贅沢

スズガミの本当の魅力は、ただ“使う”だけではなく、“手で触れて変化させる”ことにあります。その日の気分や用途によって器の形を変えられるという自由さは、日々の暮らしに遊び心と温もりを添えてくれます。

BLACKLETTERSでは、今後もこのような「香りと感性が響き合う」プロダクトを通じて、心地よい暮らしの提案を続けてまいります。

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