秩父シルク一元化プロジェクトの挑戦  その2

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前回は秩父の歴史や今までの背景などを説明してきました。
今回は弊社のシルク一元化プロジェクトが始まるまでの、1年半を語っていきたいと思います。

 

前編はこちら

 

シルク一元化の課題と投資リスクの認識

弊社は、2018年から秩父の養蚕農家と協力し、シルク産業の復興を目指してさまざまな取り組みを行ってきました。また、黒文字を使ったフレグランスブランドや、シルクを活用したスキンケアブランド「SHELOOK」を計画してきました。

 

 

 

しかし、繭を扱い、秩父で繭の生産から織物製造までの一元化を実現するには、莫大な資金が必要です。

 

これに対して、斜陽産業に多額の投資をすることに対するリスクも認識しており、企業として利益を上げるためには慎重な判断が求められました。

 

2020年からのコロナ禍で、我々の考え方も大きく変わり、秩父という地域をベースにした事業の必要性が改めて浮き彫りになりました。観光地としてのポテンシャルがある秩父に、我々の力を注ぎたいと強く感じています。

 

 

寺内織物工場のリノベーション計画

そんな中、寺内織物工場お話しを伺い、その中で秩父がより良い方向に進むためのリノベーション計画を進めていました。

 

寺内織物工場には昭和初期に作られた自動織機が10台ほどあり、その周囲にはまだ古民家が現存しています。これは観光資源として大きな価値を持つ場所です。

 

 

また、体験や織物に興味がある方がゆっくりしてもらえるカフェの計画に際し、都内で有名なコーヒー屋の社長が中学校の先輩だったこともあり、アドバイスをいただきながら進めてきました。

 

黒文字とシルクを基軸とし、秩父産の蕎麦粉を使ったガレットやクレープにシルクを混ぜ込んだり、黒文字茶や黒文字を使用したクラフトコーラなど飲料や食品の展開も視野に入れています。

 

しかし、この計画は一度白紙になってしまいました。その理由は割愛しますが、弊社の落ち度もあったと思います。

 

しかし、1年半かけて計画を進め、さまざまな方の協力も得ていたため、「はい、わかりました」と簡単に受け入れることはできず、悩む日々が続きました。

どうすれば計画を再開できるのか、あの場所で秩父のためにどう貢献できるのかを考えていました。

 

Sさんとの出会いと渋沢栄一との縁

そんな中、以前からお世話になっていた方に紹介していただいたSさんが、黒文字に非常に興味を示してくださり、お会いすることになりました。

 

その中で、リノベーション計画や地主さんが秩父鉄道の創業者の血筋であり、渋沢栄一氏が出資したことで有名な鉄道会社であるという話をしたところ、Sさんも最近渋沢栄一氏のひ孫の方に講演をお願いした経緯を聞かされて改めて人の繋がりは面白いと感じました。

 

 

その後、Sさんから「堀口さんに紹介したい人がいるから来て欲しい」と言われ、後日その場所に行きました。その時はイベントが行われていたため、名刺交換をしただけでしたが、紹介していただいたIさんとの会話の中で、秩父のベルクの話が出て、すごく親近感を覚えました。

 

後日、Iさんから再度秩父の件も含めて話を聞いていただける機会を得たのですが、調べてみると驚くほどすごい方で、本当にびっくりしました。こんな出会いがあるものなのかと正直、驚きを隠せませんでした。

 

ちょっと信じられないくらい驚いたと同時に、秩父のプロジェクトが何か大きく動くのではないかという予感がしました。

 

秩父シルク一元化プロジェクトの挑戦

 

秩父から生まれた主婦の店ベルク

ベルクという名前が出たので、少しベルクについて話します。

ベルクは秩父で創業した食品スーパーです。秩父はかつて織物や養蚕が盛んだったと前述しましたが、創業者の原島会長も織物を営んでいました。ベルクは現在、秩父には4店舗があります。

会社としては2000億くらいの規模の会社になっています。

 

秩父で活躍している企業の多くが織物産業に関わっていました。例えば、トヨタも織物の機械工場から自動車産業に移行した会社の一つです。シルクの糸を取る自動繰糸機も現在の日産自動車です。みな織物が衰退するギリギリのラインで新たなビジネスを展開して成功している企業は、本当に素晴らしいと思います。

 

 

 

プロジェクトの新たな展開への予感

Iさんもベルクの会長と親しい関係にあったため、私の話や秩父の件についても快く受け入れてくれたのだと思います。そこでプレゼンの機会をいただき、今回のリノベーションプランを説明していた時、自分でも感じていた計画の違和感を見事に指摘されました。

 

「これ、広げすぎだからシルクの一元化を目指した方がいい」と言われました。最初は「それは分かっているけど、お金がかかるし、今の技術や弊社代表の知識では難しいのでは」と思っていましたが、やるべき課題であることは理解していたので、「やっぱりやらなくちゃいけないんだ」とすぐに受け入れることができました。

 

同時に、現在進めている施設の計画が少しぶれていたことを反省するきっかけになりました。この気づきを与えてくれたことに感謝しています。

 

その後、すぐに経済産業省に連絡していただき、アポイントを取り付け、一緒に同行までしていただき、再度シルク一元化のプレゼンを行いました。

 

これからプロジェクトはどんどん進んでいきますが、一旦ここでストップします。ただ、私が想像していた以上のスピードで物事が進んでいる感覚があります。

 

これまでは鈍行電車だったのが、急に新幹線に変わったような感覚です。こうした感覚を得られたのも、本当に多くの人との出会いのおかげです。自分一人では成し遂げられないことが、このプロジェクトではたくさんあります。今、その意味を本当に実感しています。

 

まだプロジェクトはこれからも進んでいきます。また、進展がありましたら、書きたいと思います。

 

 

 

この記事を書いた人

堀口 智彦

埼玉県秩父市出身。大学在学中独学で洋服デザインを学ぶ。2007年に渡英しLCF卒業後帰国し自身のメンズブランドを設立。2015年にブランドを休止し、企業にてチーフデザイナーとして3年間従事。その後シルクと黒文字に出会い、現在は株式会社ISILKの代表取締役。

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