シルクの作り方・ビジネスモデル|養蚕農家の課題とこれからの可能性

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養蚕が秘める、日本の産業再興のカギ

かつて「白い黄金」とも称され、日本経済を支えたシルク。時代の流れとともに養蚕農家の数は激減し、今や高齢化・後継者不足に直面する「消えゆく産業」のひとつとなっています。しかし、近年ではアパレル・コスメ・医療など多分野から再評価され、再び脚光を浴びつつあります。

 

本記事では、シルクがどのように作られるかを追いながら、養蚕農家が抱える構造的課題と、現代における新たなビジネスチャンスについて考察します。

 

 

 

シルクの基本構造と2つの糸の種類

シルク糸には大きく分けて以下の2種類があります。

 

フィラメントシルク(生糸撚糸)

繭から長繊維をそのまま引き出し、数本を撚糸して作る、光沢が美しい絹糸。主に着物などに使われ、日本人が「絹」と聞いて思い浮かべるのはこちらです。

  • 工程:繭乾燥 → 選別 → ふやかし(煮繭)→ 製糸 → 撚糸 → 精錬

  • 特徴:強度が高く、表面が滑らか

  • 活用例:着物、スカーフ、ネクタイなど

 

スパンシルク(絹紡糸)

製糸時に出る短繊維や、繭を綿状に加工して紡績する絹糸。ふんわりとした風合いで、カットソーやニット向き。

  • 工程:繭カット → 蛹の除去 → 解繊 → 紡績

  • 特徴:嵩高で吸水性があり、柔らかい

  • 活用例:肌着、ニット、スキンケア素材 など

 

 

自然から生まれた美しさ:シルクという化粧品原料のすごさ

 

 

養蚕農家が直面する構造的課題

かつて全国に数万戸あった養蚕農家は、2020年時点でわずか数百戸以下に。背景には以下のような問題があります。

■ 販売経路の制限と利権構造

繭はJA(農協)経由での販売が主流で、個人での販路開拓が難しいケースも。また買い手が少なくなった現在は、JA側でも売り先がなく、採算が合わないこともしばしば。

 

■ 工程の多さと非効率性

糸を作るには乾燥・選別・製糸・撚糸・精錬と多くの工程が必要。しかも、それぞれを担う業者が全国に点在しており、小ロット生産には不向きな体制です。

 

■ クズ繭・副産物の扱い

スパンシルク用の繭や蛹は本来副産物ですが、活用方法が確立されていない地域では廃棄されることも多い。これが生産者のモチベーション低下にもつながっています。

 

 

サステナブル素材としてのシルクの可能性

一方で、サステナビリティへの関心が高まる今、シルクは環境配慮型の素材として注目されています。

 

  • 生分解性があり、自然に還る素材

  • 肌にやさしく、アレルギーリスクが低い

  • 食品・医療分野(繭タンパクの再活用)でも研究進行中

 

たとえば、繭の成分であるセリシンやフィブロインは、保湿成分として化粧品原料にもなり、美容分野との親和性も非常に高いのです。

 

 

実体験から見た、シルクビジネスのリアル

筆者も2018年より秩父を拠点に、シルクに関するものづくりを始めました。当初は生糸を使って製品開発を行いましたが、撚糸や精錬などの工程に時間とコストがかかり、思ったような質感や価格には至りませんでした。

 

そこで注目したのがスパンシルク。ニットやカットソーに向く短繊維で、風合いも良く、少量から加工が可能。繭をカットし、蛹を除去し、糸にしていくまでの過程を施設作業や地域連携により仕組み化することで、雇用創出や地域ビジネスとしての再構築が見えてきました。

 

スパンシルク開発が抱える現実的な壁

実際にスパンシルクを使ってニット製品を作ろうとした際、筆者が直面したのは「繭から蛹を取り出す」という単純だが膨大な作業でした。

 

スパンシルクの糸を作るのに必要な切繭は20kg。それを用意するのに少なくとも200kgの繭が必要。繭1つ1つを手作業で切って蛹を除去する工程には、想像以上の時間と労力がかかります。

 

この経験から感じたのは、「現場での仕組み化や外部連携なしには、スパンシルクを用いたビジネスは継続困難」という現実です。実際、蛹を除去する作業を地域の高齢者や福祉施設と連携して行うことで、労力の分散と地域雇用の創出が可能になる道も見えてきました。

 

しかし、現時点ではその仕組みづくりが整っていないため、筆者が手がけたスパンシルクでのニット開発は一時的に暗礁に乗り上げています。素材の可能性をビジネスとして成立させるためには、プロセス全体を見据えた仕組みの再構築が不可欠なのです。

 

 

 

これからのシルクは「香り」や「スキンケア」分野へ

私たちの展開する【BLACKLETTERS(ブラックレターズ)】では、秩父産のクロモジやユズなど天然精油を使用した自然香水を手がけています。

 

シルクとは異なる文脈ながら、「自然の循環」と「地域素材の活用」という点で共通しており、シルク副産物との掛け合わせも模索中です。

 

また、姉妹ブランド【SHELOOK(シルック)】では、秩父産シルクとスキンケアの融合を図っています。現在開発中の製品には、絹紡糸や繭エキスを活かした石鹸・ボディクリーム・レッグウォーマーなどがあり、敏感肌にも対応した自然派アイテムとしての需要が高まっています。

 

👉 BLACKLETTERSの香水を見る(公式サイト)
👉 SHELOOKのスキンケア製品を見る(公式ページ)

 

 

 

まとめ|養蚕は再生可能なローカル産業

養蚕は確かに難しい産業です。設備、人材、販路など、多くの壁があります。しかし、素材としての美しさ・機能性、そしてローカル経済に与えるインパクトを考えたとき、今こそ次世代の養蚕ビジネスモデルを築くタイミングではないでしょうか。

 

シルクの復興は、一部のラグジュアリーブランドだけの話ではありません。地域の力で循環をつくり、小さなロットからでも動き出すことで、また新しい「白い黄金」の時代がはじまるかもしれません。

 

 

 

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この記事を書いた人

堀口 智彦

埼玉県秩父市出身。大学在学中独学で洋服デザインを学ぶ。2007年に渡英しLCF卒業後帰国し自身のメンズブランドを設立。2015年にブランドを休止し、企業にてチーフデザイナーとして3年間従事。その後シルクと黒文字に出会い、現在は株式会社ISILKの代表取締役。

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