【【秩父のめぐみ】5年後の構想 ― 人・技術・自然が循環する地域の未来図

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はじめに:なぜ今、秩父の未来を描くのか

都心からわずか1時間余りの距離にありながら、豊かな自然に囲まれた秩父。この土地には観光資源や伝統産業など、多くの可能性が眠っています。

 

しかし現実には、高齢化の進行や若年層の流出といった課題を抱えており、地域としての持続性が危ぶまれています。

 

私たちがこの地に拠点を構えたのも、そうした課題と正面から向き合い、「地域の未来をつくる」ためです。

 

 

 

地域課題:若者の流出と物流インフラの壁

秩父には高校はあるものの、大学が存在しないため、多くの若者は卒業後に都市部の大学へ進学し、そのまま地元に戻らないケースが一般的です。これにより、地域の若年層人口は減少し、高齢化が加速しています。

 

かつて、秩父にスターバックスの出店を検討した際、担当者から指摘されたのが「物流ルートの制約」と「人材確保の難しさ」でした。とくに熊谷〜秩父間に中継地点がないことで、商品流通の効率性に課題があったのです。

 

しかし現在は、深谷花園プレミアム・アウトレットの開業によって状況が変わりました。アウトレット内にスターバックスが出店したことで、花園を中継拠点とした物流ルートが実現し、秩父への物資供給も現実的なものになりつつあります。

 

 

構想①:教育と研究の拠点づくり

―サテライト大学の設立と地域資源を活かした実践型学問の場―

これからの秩父に求められるのは、単なる観光地としての発展ではなく、知的資源と人材が循環する地域づくりです。そのための第一歩として、「教育」と「研究」を核としたサテライト型大学の誘致を構想しています。

 

■ オンライン×現地体験のハイブリッド型学び

交通インフラの課題が残る秩父では、完全な通学制大学の設立は難しい一方で、通信制+現地滞在型(サテライト)大学であれば十分に実現可能です。

オンラインでの基礎学習に加え、秩父の豊かな自然や産業資源を活かした現地フィールドワークや研究を組み合わせることで、実践型の教育プログラムを提供できます。

 

■ 教授・研究者の誘致と産学連携の場づくり

特定の大学だけに限らず、多分野の研究者・教授陣が秩父に集う「研究共創拠点」を目指します。たとえば:

  • SHELOOKが扱うシルク素材を軸に、蚕の育種や繊維技術に関する研究

  • BLACKLETTERSが展開するクロモジの香りを活かした香料・精油研究

  • キハダの樹皮からつくられるソープの薬効成分研究

  • 秩父樹液組合のメープルシロップに関する食品・健康機能性分析

 

これらの研究は、地域資源の付加価値を高めるだけでなく、森林保全や生物多様性の維持にもつながります。

 

 

■ 医療・看護人材の育成と連動した仕組み

教育機能の整備は、看護師・医師不足という医療体制の課題とも深く関係しています。秩父ではすでに看護師資格の取得支援プログラム(学費・住居支援つき)が存在しますが、これを地域大学や医療研究機関と結びつけることで、医療人材の地域定着を促進することが可能です。

 

将来的には、地域病院・在宅医療・予防医療と連携したヘルスケア複合施設の併設も視野に入れています。

 

教育と医療、自然と産業、そして人の循環を結ぶ知の拠点として。
秩父の自然と文化を背景に、地域全体を「学びと研究のフィールド」として再設計していく構想です。

 

 

 

 

構想②:研究と商品が循環する「体験型エコシステム」

単なる研究だけでなく、その成果がすぐに商品として形になり、訪れた人が「見る・買う・体験する」ことができる場所が理想です。

 

たとえば、秩父樹液組合が提供しているメープルシロップの採取体験のように、商品の裏側にあるストーリーを体感できることが、今後のブランド価値を高める鍵になります。

 

私たちは、SHELOOKのスキンケアや衣料品、BLACKLETTERSの香水・精油といった製品の原料調達から製造、販売、体験まですべてを一つの流れで「見える化」できる施設を目指しています。

 

 

構想③:複合型施設によるまちづくりと、未来の交通

こうした教育・研究・商品・体験が一体となった複合施設は、秩父に新たな産業と雇用をもたらします。建築や運営は地元と連携し、持続可能な経営モデルを志向します。

 

東京農業大学の長島教授からは、滋賀県の「ラ コリーナ近江八幡」のような地域密着型の施設を参考にすべきという助言もいただいており、秩父にしかできない体験価値の創出に挑戦します。

 

また、空飛ぶ乗り物や新幹線の地方延伸など、交通インフラの未来像も視野に入れ、今後の訪問者増に対応できる準備を進めていきます。

 

 

 

ブランドとの連携:SHELOOK・BLACKLETTERSの役割

私たちが展開する2つのブランド、SHELOOK(シルクスキンケア・冷え対策ウェア)とBLACKLETTERS(和精油・フレグランス)は、この構想の中心的存在です。

 

  • SHELOOKでは、森田商店の撚糸を用いたレッグウォーマー・腹巻き・靴下・ニット帽など、冷え性改善と美容をテーマにした製品を開発。

  • BLACKLETTERSでは、秩父産クロモジなどの素材から抽出した精油や香水を、国内外に向けて展開中です。

 

これらのブランドを核とし、研究と体験を通じて「秩父の恵み」を発信していきます。

 

おわりに:秩父から始まる「地方創生のリアルモデル」へ

今後の5年で目指すのは、「研究と生活」「商品と自然」「地元と外部人材」が有機的に結びついた、持続可能なまちづくりの実現です。

秩父に住む理由、働く理由、訪れる理由を一つひとつ積み上げていく。それが、この地域を未来へとつなぐ鍵になると信じています。

 

香り、繊維、森林、医療。秩父にある素材や技術はすでに多くのブランドに活用されています。

BLACKLETTERSやSHELOOKはその象徴的な存在であり、それらを教材・研究対象にすることで、秩父という地域そのものが「大学」となりうる未来が開けてきます。

BLACKLETTERSの香りの世界を見る

SHELOOKのシルクケア製品にふれる

 

この記事を書いた人

堀口 智彦

埼玉県秩父市出身。大学在学中独学で洋服デザインを学ぶ。2007年に渡英しLCF卒業後帰国し自身のメンズブランドを設立。2015年にブランドを休止し、企業にてチーフデザイナーとして3年間従事。その後シルクと黒文字に出会い、現在は株式会社ISILKの代表取締役。

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