日本に香水が入ってきた歴史と、今こそ注目すべき国産フレグランスの価値
はじめに:日本に香水文化が根付かない理由と、いま注目される“和の香り”
「なぜ日本では香水を使う人が少ないのか?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?
実際、日本の香水市場はフランスの3分の1以下。けれど、柔軟剤やスキンケアには香りが溶け込んでいる——つまり、日本人にとって“香りが嫌い”なのではなく、“香水という形”に馴染みがなかったのです。
しかし今、その流れが少しずつ変わりつつあります。森林の香り、自然の余韻、和精油を使った繊細な香りが、「今の気分に合う」と再注目されはじめているのです。
本記事では、香水が日本に伝わった歴史から、和の香りが持つ魅力、そして今なぜ日本産フレグランスが求められているのかまで、背景と展望をまとめてご紹介します。

日本と香水文化:なぜ香りに疎遠だったのか?
日本の香水市場は、フランスと比べてその規模が約3分の1とも言われています。対照的に、スキンケア製品の市場は6倍近くに達し、「香水=身だしなみ」の文化が根付いている欧米とは明確な違いが見られます。
日本では、トイレタリー用品(柔軟剤・ヘアケア・洗剤など)に香りが溶け込む一方で、「肌に直接つける香り」に対しては、今も慎重な姿勢が残っています。香水に対する距離感は、文化的背景に強く根差しているのです。
2022年のデータによると、日本の香水市場はフランスの約3分の1の規模であり、香水を使用する日本人は全人口の約10%未満と推測されています。
また、2023年度のフレグランス化粧品市場は構成比1.3%(326億円)と、化粧品市場全体に占める割合は小さいです。
市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
日本における香水の始まり:ローズウォーターの伝来
香水が初めて日本に伝わったのは、江戸時代中期だと言われています。オランダ人によってもたらされた「バラ水(ローズウォーター)」がその起源です。
当時は塩化アンモニウムで保存処理された蒸留水が輸入され、貴族や上流階級の嗜好品として珍重されていました。
また、黒船来航で有名なペリー提督が来日した際、日米交流の贈り物の一つとして香水が用いられたという記録もあります。この香水もフランス製であり、日本国内では香水製造の技術がまだ確立されていなかった時代のことです。

明治〜昭和初期:国産香水産業の誕生
1913年ごろから、日本国内でも香水の製造が活発になり始めました。資生堂をはじめとする化粧品メーカーが香りの研究を進め、「花椿」などの国産香水が登場。日本人の感性に合わせた繊細な香りづくりが、徐々にスタートしていきました。
しかし、文化としての“香水をまとう”という習慣は広まりきらず、その背景には「無臭が礼儀」という日本独自の衛生観念や、毎日入浴する生活習慣も関係しています。

世界における“香り”の歴史:火と祈りのルーツ
「Perfume(香水)」という言葉は、ラテン語の「Per(通して)+Fume(煙)」に由来しています。人類最古の香り体験は、火にくべた植物の芳香でした。
南米のパロサント(聖なる木)は、今も儀式で焚かれる浄化の香り。 エジプトでは、ミイラを作る際に使われたミルラ(没薬)が、神に捧げる香として黄金と同等の価値を持ちました。
こうした“香りと祈り”の結びつきは、世界共通の文化であり、日本でもお香や沈香が、寺院や神道の場で使われ続けてきました。


日本の香木文化とクロモジの存在
日本では、仏教伝来とともに香がもたらされ、特に香道の世界では“香りを聞く”という繊細な感性が育まれてきました。
中でも、私たちISILKが着目しているのが「クロモジ」という香木です。古来より神に捧げる浄化の木とされてきたクロモジは、秩父をはじめとする日本の山林に自生し、芳香成分を多く含む天然資源として知られています。
このクロモジから採れる精油は、レモンやラベンダーに似た甘さと、木のぬくもりを感じる繊細な香りが魅力。森林浴のように深呼吸したくなる香りは、日本人の生活感覚に自然とフィットします。

なぜ今、日本の香りが必要なのか
グローバルに見ると、香水の主流はパワフルで個性の強い香りです。しかし、コロナ以降、暮らしの中に“癒し”や“静けさ”を求める流れが生まれ、やさしい香り、自然と調和する香りへの関心が高まっています。
そんな中、私たちは改めて「和の香り」の持つ価値を見直したいと考えています。
クロモジやニオイコブシなどの和精油は、人工的な強さよりも“余韻”や“気配”を楽しむ香り。空間にふわっと広がる、優しくて静かな香りの提案です。
香水文化が変わり始めている今、日本からできるこ
昔は海外香水が9割以上を占めていた日本市場ですが、いま国産香水・和精油の注目がじわじわと広がっています。
実際に、日本の森林香・土壌・気候から得られる香料は非常にユニークで、海外にも輸出可能なクオリティを持ちます。
ISILKではSDS対応・輸出成分管理も含め、産地と香りを正しく繋げるフレグランス事業を展開しています。
まとめ
日本の香水文化は、欧米のような歴史や市場規模はまだありません。しかし、日本人ならではの感性、自然との調和、美意識を香りに込めることで、世界とは違う価値を発信できると信じています。
香りは“見えない感性”を届ける手段。 だからこそ、今あらためて、日本の香りに注目してみませんか?
フレグランス除菌スプレー
秩父のめぐみを使ったプロダクト。
香りとともに日常を非日常に。
フレグランス除菌スプレー