SDS(旧MSDS)とは?精油・香水の輸出に必要な安全データシートの基本と実務の壁
この記事でわかること
- MSDSとSDSの違い(名称変更の経緯)
- 精油・香水ビジネスでSDSが必要になる場面
- 香水を輸出するために必要な条件(引火点測定)
- 化粧品(化粧水など)をEUに輸出する場合の要件
- スモールブランドが直面する分析コストの現実
香りのビジネスを始め、海外への展開を考えたとき、必ず壁になるのが「SDS(安全データシート)」と各国の法規制です。この記事では、ISILKが実際に直面してきた輸出の実務を踏まえて、正確な情報をお伝えします。

MSDSとSDSの違い
まず名称の整理から。
- MSDS(Material Safety Data Sheet):旧称
- SDS(Safety Data Sheet):2017年にJIS Z 7253に準拠する形で名称統一
内容は同じです。名前だけが変わりました。
国連が推進するGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)に準拠しており、化学物質を含む製品を他の事業者に譲渡・提供する際に交付が必要な文書です。
SDSが必要になる場面
| 使用シーン | SDS必要性 |
|---|---|
| 精油・香料をOEM工場に提供 | ✅ 必須 |
| 海外へ精油・香水を輸出 | ✅ 必須 |
| 一般向けに雑貨として国内販売 | ❌ 原則不要 |
OEM工場は「安全性が証明された原料」しか受け入れません。SDSだけでなく、ヒ素・鉛・重金属の分析証明書のセット提出が求められるケースがほとんどです。
香水を輸出するための条件
引火点の測定が必須
香水はアルコールを含むため、危険物として扱われます。輸出(特に航空便)では引火点の数値がSDSに明記されている必要があります。
| 精油名 | 引火点の目安 |
|---|---|
| ヒノキ | 約38.5℃ |
| レモン | 約47.5℃ |
| クロモジ | 約62℃ |
| スギ | 約87℃ |
引火点が低いものほど航空輸送の制限が厳しくなります。
香水輸出のクリア条件
化粧品製造許可のある工場で製造した香水であれば、以下の条件を満たすことで輸出は可能です。
- 使用した香料のSDSが揃っている
- 香水全体の引火点を、専門の分析機器で正確に測定・記録している
- SDSに引火点・危険物分類・UN番号が正しく記載されている
逆に言えば、引火点を正確に測定できる分析設備がないままでは、SDSを作成しても輸出書類として通用しないリスクがあります。化粧品製造許可を持っているだけでは不十分で、引火点の実測データが必須です。
化粧品(化粧水など)をEUに輸出する場合
香水とは別に、化粧水・クリームなどの化粧品をEUに輸出する場合は、さらに複雑な要件があります。
EU輸出の主な要件
- INCIリスト(成分の国際命名リスト)の作成
- PIF(製品情報ファイル)の整備
- 安全性評価レポート(EU資格を持つ評価者による署名が必要)
- EU域内に責任者(Responsible Person)の拠点が必要
最後の「EU域内に拠点が必要」という条件が大きなハードルです。日本の小規模ブランドが単独でクリアするのは現実的ではありません。
現実的な対応策
EUの代理店・代行業者を通じるのが最も効率的です。EU域内に拠点を持つ代理店や規制対応専門の代行業者がResponsible Personを引き受けてくれるため、日本側の負担を大幅に削減できます。Ki:tsのようなロンドンのセレクトショップとの関係が、こうした現地パートナーを見つける入口にもなります。
原料開発の現実的な壁
日本国内で天然原料を自社開発しても、
- SDSの作成・引火点測定ができる機関が限られる
- 成分分析に1案件5万〜10万円前後のコストがかかる
- EU向けには英語版SDS・GHSラベル・現地対応が別途必要
これらが積み重なることで、スモールブランドのオリジナル原料の製品化・輸出が難しい現実があります。ISILKが直面してきた課題でもあります。

輸出時のラベリングと法規制にも注意
SDSを準備するだけでは不十分です。輸出用に精油・香水・スプレー商品を扱う場合、以下も必須になります。
- SDSの翻訳:英語版、または対象国の言語での作成
- UN番号(国際輸送規格)とGHS分類の明記
- 商品パッケージへの危険物ラベル・輸送用表示への対応
これらが不十分なまま輸出すると、通関トラブルや現地での販売拒否につながることがあります。書類の整備は「作ればいい」ではなく、正確な内容で揃えることが前提です。

原料開発の現実的な壁
日本国内で天然原料を自社開発しても、
- SDSの作成・引火点測定ができる機関が限られる
- 成分分析に1案件5万〜10万円前後のコストがかかる
- EU向けには英語版SDS・GHSラベル・現地対応が別途必要
これらが積み重なることで、スモールブランドのオリジナル原料の製品化・輸出が難しい現実があります。この分析・書類対応のハードルが、スモールブランドの差別化を妨げる要因にもなっています。 ISILKが直面してきた課題でもあります。

ISILKの取り組み
ISILKでは、秩父産クロモジ・シルク抽出液などの天然原料を軸に、国内外への展開を模索しながら書類・安全性データの整備を進めています。
香水については、BLACKLETTERSとして国内での販売を継続しながら、輸出に必要な引火点測定・SDS整備を段階的に整えています。ロンドンのKi:tsへの紐お香の提供も、その流れの一部です。
製品一覧・お問い合わせはこちらから:
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まとめ
- MSDSとSDSは同じもの。2017年に名称が統一された
- 香水の輸出:化粧品製造許可+香料のSDS+引火点の実測データがセットで必要
- 化粧品のEU輸出:INCI・PIF・安全性評価+EU域内拠点が必要。現実的にはEU代理店を活用
- 分析コストと制度
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